手斧始式の由来 
       
      鶴岡八幡宮における手斧始式の歴史は古く、「吾妻鏡」によれば約800年前の養和元年(1181) 
      源頼朝公が行った八幡宮造営寺に「若宮営作始」が執り行われた事が記されています。 
      建久二年(1191)火災により社殿が焼失し、八幡宮が現在のように上宮(本殿)・下宮(若宮)の形に 
      なった際にも「若宮仮殿造営事始」の名称で神事が執り行われています。 
       
      時をへて昭和二十四年(1949)、現在の「手斧始式」として神事が再興され、年間を通じて行う 
      鶴岡八幡宮営繕の仕事始めの式として、また鎌倉市全体の工事始めの式として、神事の中で地鎮 
      の祭から棟上の祭等、全て工程を営み、八幡大神の加護によって工事安全と建築が永遠に栄える 
      ことを祈願するもので、毎年一月四日に行われています。 
       
      当時鎌倉時代の「釿始」で造営諸奉行が参集し、由比ヶ浜から用材を境内まで曳行していたことに 
      倣い工匠・鳶職による「木遣り音頭」も勇ましく、儀式に用いる御新木を二ノ鳥居より参道の段葛を 
      通り境内中央の舞殿前に奉安します。 
       
      奉安されたご用財を前に宮司以下祭員、奉仕の工匠等は神事に先立ち袚い清めの修袚をし、 
      その後八幡大神を始め宮殿屋敷等守護の八柱の神をお迎えする為、降神の儀を行います。 
      ご神前に海川山のお供え物を饗する献饌の後、宮司による工事の安全を祈る祝詞奏上に続き、 
      鎌倉の建築業者の工匠により次の所役が奉仕されます。 
       
      1.幣振役(斧振りを奉仕)、2.工匠(尺杖を使う)、3.鋸役(鋸を使う)、4.墨打役(墨打ちを奉仕)、 
      5.手斧役(手斧打ちを奉仕)、6.槍鉋役(槍鉋を使う)。 
       
      この他にも儀式全体を統括する「検知役」、所作に必要な道具を預かる「道具役」、道具役から授か 
      った道具を奉仕所役に渡す「補佐役」等の所役が古式に則った作法で奉仕し 
      神事を厳粛に進行させます。 
       
      工匠達による所役が奉仕された後、宮司、奉仕者、参列者の順に玉串を捧げて拝礼し一年間の工事 
      の安全を祈念します。そしてお迎えした神々にお還りいただく昇神の儀を以って一同退下します。 
      当時の「釿始」の神事は「手斧始式」として現代に受け継がれ、名称や内容に若干の変化はあるもの 
      の、神事の意義や奉仕する神職・工匠等の精神に何ら変わるものはありません。 
      神社特有の「中今」の精神に則り、往時の技を今に伝える手斧始式は八幡宮の歴史に沿って受け継 
      がれていきます。 
       
      鶴岡八幡宮「手斧始式の由来」より引用 
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