第57回鎌倉薪能 演目解説 仲司由起子氏の文を参照し一部を引用しています。


鐘の音(かねのね)
 
主人が息子の成人を祝い黄金造りの太刀を贈ろうと思いつき、

太郎冠者に鎌倉へ行って「金の値」を聞いてくるように命じます。

鎌倉に着いた太郎冠者は、名刹と言われる鎌倉の寺々を巡り、

「鐘の音」を聞いて回ります。

主人のもとに戻り、鎌倉で聞いた「鐘の音」を真似したり、

鐘撞きの仕草を身振り手振りを交えて主人に報告・・・・。

主人はそれを聞いて怒り、仲裁が入る

太郎冠者は怒りを和らげるために舞う。



恋重荷(こいのおもに) 

白河の院に仕える臣下が登場し、

宮中で菊の手入れを
する山科の荘司という老人が女御に恋心を抱いている

と述べる。

錦で飾って軽く見せた重荷を荘司に担がせ、庭を巡ることができれば、

女御が姿を見せるだろうと告げます。

荘司は、思いを込めて重荷を持ち上げようとするが重荷は持ち上がらず

泣き崩れ、絶望し亡くなってしまう。

荘司の死を聞いた女御は、遺骸を前にすると、大きな石に押さえつけ

られたようになり、立ち上がることができない。


悪鬼となった荘司が出現し、女御への恨みを述べ、地獄で重い責めを

受ける自分と同じ苦しみを味わうがよいと言い、女御を責めます。

やがて思いのたけを女御にぶつけた荘司は、心が晴れ、

女御の守り神となることを約束して消え失せる。

綾鼓(あやのつづみ)

木の丸の御所に仕える臣下が登場し、

宮中の庭掃きの老人が女御に恋心を抱いていると述べる。

老人は池のほとりの桂の木の枝に掛けた鼓を打って、

音が響けば女御が姿を見せるだろうと告げられる。

鼓は、硬い皮ではなく、綾(布)で張ってあるので音が響かない、

そのことを知らない老人は絶望し、池に身を投げて死んでしまう。

老人の死を聞いた女御は聞こえてきた鼓の音と池の波音に心を乱し、

正気を失ってしまう。  


そこへ老人の怨霊が現れ、恨みを述べ、女御に鼓を打てと責める。

しかし鼓は鳴らず、女御は嘆くばかり。怨霊は尽きることない

恨みを残したまま「恋の淵」に沈んでいった。

 
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